
「車でお金貸します」「車に乗ったまま融資OK」——こんな看板やチラシを見かけたことはありませんか?
急にお金が必要になったとき、銀行や消費者金融の審査に通らなかったとき、つい「車を担保にすれば何とかなるかも」と考えてしまう気持ちはよくわかります。でも、ちょっと待ってください。車担保金融の世界には、真面目に営業している業者もいれば、利用者を食い物にする悪質な業者も紛れ込んでいます。
まず知っておきたい:車担保金融の2つのタイプ
車担保金融には、大きく分けて2つの方式があります。どちらを選ぶかで、リスクの大きさが変わってきます。
「預かり方式」は、文字通り車を業者に預けてお金を借りる方法です。質屋に貴金属を預けるのと似ていますね。融資期間中は車に乗れませんが、業者側も確実に担保を管理できるため、比較的まともな業者が多いのが特徴です。査定額も「乗ったまま方式」より高めになる傾向があります。
一方、「乗ったまま方式」は車を使い続けながらお金を借りられる方法。一見便利そうに聞こえますが、実はここに落とし穴があります。この方式を悪用する業者が非常に多いんです。名義変更や車検証の引き渡しを求められ、気づいたら車の所有権が業者に移っていた、なんてケースも珍しくありません。
正直なところ、「乗ったまま融資OK!」と大々的に宣伝している業者には、かなり警戒したほうがいいでしょう。
これだけは絶対確認!安心できる業者の4つの条件
1. 貸金業の登録があるか——これが最重要
お金を貸す商売をするには、国や都道府県に「貸金業者」として登録する義務があります。登録していない業者は、どんなに親切そうに見えても100%闇金です。
確認方法は簡単。金融庁のウェブサイトに「登録貸金業者情報検索サービス」というページがあるので、そこで業者名や電話番号を入力して検索してみてください。ヒットしなければアウト。即座に取引を中止すべきです。
ただし注意点がひとつ。業者のホームページに「東京都知事(1)第○○号」といった登録番号が書いてあっても、それが本物とは限りません。嘘の番号を堂々と掲載している悪質業者も存在します。必ず金融庁のサイトで裏を取ってください。
2. 金利が法律の範囲内か——「みなし利息」に要注意
利息制限法という法律で、貸金業者が設定できる金利の上限が決まっています。
- 10万円未満を借りる場合:年20%まで
- 10万円以上100万円未満:年18%まで
- 100万円以上:年15%まで
これを超える金利を提示してきたら、その時点で違法業者確定です。
でも、ここで油断してはいけません。表面上の金利は18%でも、「保管料」「名義変更手数料」「リース料」といった名目で別途お金を取られるケースがあります。法律ではこうした費用も「みなし利息」として利息に含めて計算するので、実質的な金利が法外に高くなっていることがあるんです。
例えば、100万円を年10%で借りて、月々5万円の「リース料」を取られたとします。一見すると金利は低く見えますが、リース料も利息とみなされるため、実質的には年70%を超える暴利になってしまいます。契約前には、すべての費用を合計した「総支払額」を必ず確認してください。
3. 契約書をきちんと渡してくれるか
まともな業者なら、契約内容を書面できちんと交付します。借入金額、金利、返済期間、返済方法、手数料の内訳——これらが明確に記載されているかチェックしましょう。
「急いでるから契約書は後で送るよ」「口頭で説明したから大丈夫」なんて言う業者は信用できません。その場で契約書を受け取り、内容を一つひとつ確認する時間を取ってください。わからないことがあれば遠慮なく質問し、納得できるまで契約書にサインしてはいけません。
4. 「預かり方式」を基本にしているか
前述の通り、預かり方式の方が業者側のリスクが低いため、比較的安全な取引ができる傾向にあります。もちろん、乗ったまま方式を提供する正規業者もゼロではありませんが、悪質業者が好んで使う手口でもあるので、より慎重な判断が必要です。
「車に乗ったままでOK!」という甘い言葉に飛びつく前に、本当にその業者が信頼できるのか、他の3つの条件もクリアしているか、しっかり確認してください。
こんな業者には絶対近づくな!危険なサインを見逃さない
次に挙げるのは、悪質業者によく見られる特徴です。一つでも当てはまったら、その業者とは関わらないほうが身のためです。
「誰でも借りられます」「審査なし」と謳っている
正規の業者なら、どんなに簡単な審査でも必ず行います。「ブラックOK」「無審査」を売りにしている業者は、まず疑ってかかるべきです。
車検証や名義変更書類を安易に要求してくる
車検証を預かったり、名義を業者に変更させたりするのは、車の所有権を奪うための第一歩です。返済が1日でも遅れたら即座に車を売却され、手元に戻らなくなる恐れがあります。
ちなみに、車検証を携帯せずに運転すると50万円以下の罰金、自賠責保険証を携帯しないと30万円以下の罰金が科せられます。業者に書類を渡してしまうと、知らないうちに法律違反の状態で運転させられることになるんです。
やたらと手数料が多い
「名義変更料」「保管料」「事務手数料」「リース料」……名目はいろいろですが、要するに法定金利を超える利息を取るための口実です。契約前に総額を計算し、実質的な金利が法律の範囲内かどうか必ず確認しましょう。
完済しても車を返さない
信じられないかもしれませんが、全額返済したのに「書類の不備がある」「手続きに時間がかかる」などと理由をつけて車を返さない業者が実在します。最悪の場合、すでに転売されていて取り戻せないこともあります。
態度が高圧的、または妙に馴れ馴れしい
契約を急かしたり、質問にまともに答えなかったり、逆に「困ってるんだろ?力になるよ」と親身なフリをして油断させたり。こうした業者の態度には要注意です。
もしトラブルに巻き込まれてしまったら
万が一、悪質な業者と契約してしまった、あるいは既にトラブルになっている場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談してください。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 弁護士・司法書士 | 多くの法律事務所で無料相談を受け付けています。業者との交渉や法的手続きを代理してもらえます。 |
| 警察 | 脅迫や暴力的な取り立てを受けたら、すぐに110番してください。 |
| 消費者ホットライン「188(いやや)」 | 国民生活センターにつながり、専門の相談員がアドバイスしてくれます。 |
| 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター | 登録業者とのトラブルに関する相談窓口です。 |
恥ずかしいとか、怖いとか、そんなことを考えている場合ではありません。被害が大きくなる前に、できるだけ早く相談することが大切です。
本音を言えば、車担保金融はおすすめしません
ここまで見分け方を説明してきましたが、正直に言います。車担保金融は、よほどの事情がない限り利用しないほうがいいです。
理由は単純。金利が高すぎるからです。担保があるのに年15~20%というのは、無担保の消費者金融(年18%程度)や銀行カードローン(年14%程度)と変わらないか、むしろ高いくらいです。しかも、返済が滞れば大切な車を失うリスクまであります。
車を担保にしなければお金を借りられない状況なら、いっそのこと車を売却して現金化したほうが、トータルで見れば得になるケースが多いんです。車担保金融で借りられる金額より、売却したほうが手にできる現金は多いですし、利息を払い続ける必要もありません。
また、すでに他社からの借入があって返済に困っているなら、車を担保に新たな借金を重ねるより、債務整理を検討したほうが賢明です。任意整理なら利息をカットしてもらえますし、車を手放さずに他の借金だけを整理することも可能です。
まとめ——慎重に、冷静に、判断してください
車担保金融を利用するなら、最低限これだけは守ってください。
- 金融庁のサイトで貸金業登録を必ず確認する
- 金利と手数料を合わせた総支払額を計算し、法定金利の範囲内か確認する
- 契約書の内容を隅々まで読み、納得してからサインする
- 「乗ったまま融資」を強く勧めてくる業者には特に警戒する
お金に困っているときほど、冷静な判断が難しくなります。でも、焦って悪質業者に引っかかってしまったら、状況はさらに悪化します。
もし少しでも不安を感じたら、契約する前に誰かに相談してください。家族、友人、あるいは消費生活センターでもいい。第三者の目を通すことで、見えなかったリスクが見えてくることもあります。
あなたの大切な車と生活を守るために、どうか慎重に、冷静に、判断してください。